長谷川建一 有料メルマガ 第1号 2021年5月1日 (サンプル号)
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/ 長谷川 建一 /
/ 有料メルマガ Vol.1 /
/ 2021年5月1日号 / 第1号
▽今週のトピック「ワクチン接種」
世界の関心事は、いまやワクチン接種がどれだけ早くなるかに移っている。アメリカは既に、2億5千万回を超え、50歳以上の8割程度が少なくとも1回の接種を終えたという水準まできた。バイデン大統領は、2回接種した者には、屋外でのマスク義務を免除することを発表して、「正常化」に向かって着々と前に進んでいることを示そうとしている。なお、アメリカは、ワクチン確保にめどが立ったので、少なくとも6千回分を海外に供給し、途上国の接種を支援する方針に転じるという。
対照的に日本では、ワクチン接種は進まず、感染対策の不具合もあって、感染者が減少しない厳しい状況である。東京や神奈川では、医療従事者ですらワクチン未接種である方も多いと聞く。生身で戦えというのは酷な話で、日本人はロジスティクスがこんなに下手だったかなと、心配になる。ワクチン接種をする側がワクチン未接種という笑えない話も起こっているという。5月終わりころには、大都市圏に大規模接種会場を設置するというが、後手後手感は否めない。政府・自治体の皆さんには、大変なことは理解できるが、判断し、行動してほしい。
香港では、3月から30歳以上へ居住者へのワクチン接種が始まっている。接種予約サイトに入り、自分の香港IDでログインすると、先ず、シノバックかファイザーのワクチンを選択できるようになっている。そのあと、接種会場をリストから選択し、2回分の接種日時を予約することができる。1回目と2回目の間隔も3週間以上を空けた上で、2回分の予約をしなければならない仕組みになっており、実に簡便である。
感染対策としては、香港は、厳格である。居住者は全員外出用のアプリをスマホにダウンロードをしていて、レストランやお店に滞在する際は毎回そのアプリで店頭にあるQRコードをスキャンして外出の際の経路をアプリにレコードしなければ、入店を拒否される。引き続きマスクの着用は義務で、外でマスクをしていないと5000香港ドル(約7万円)の罰金が課される。どこで感染者が出たかをチェックできるサイトもあり、かなり詳細にどの地域で感染を増えているかをほぼリアルタイムで、確認ができる。
https://chp-dashboard.geodata.gov.hk/covid-19/zh.html
そういったルールや取り締まりの結果、普段の生活と比べると、確かに面倒ではあるのですが、厳重なルールのおかげで現在はピーク時の5%程度の感染者数で推移をしています。 どうやら今後、入境時の隔離規制も3週間から2週間に短くなる可能性がありそうです。
▽インド、首都封鎖延長=酸素不足、危機続く―新型コロナ
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021042500385&g=int
インドでは現在、新型コロナウイルスの感染が急拡大しており、1日あたりの感染者数は現在世界で最も多い国になってしまった。連日30万人を越える感染者となると、医療崩壊と言わざるを得ない状況は避けられない。ロジスティクスも混乱をきたし、最初に、衣料品で不足することになったのが崩壊したのが医療酸素だった模様。
一部報道では、医療用の酸素そのものが不足と、見出しで書かれたものが出ているが、インド国内には十分に治療を行えるだけの酸素はあり、輸送ネットワークの問題とのこと。前述の通り、ワクチンがあってもうまく接種が進まないことと同じで、もどかしい。救える命が、救えなくなることは大変悲しいことである。
https://jp.reuters.com/article/air-liquide-results-idJPKBN2CD0JU
この記事によると、デリー首都圏に酸素を供給する製造者は7州に及び、一部は1000km以上も離れているようだ。弾力的に対応しようにも、需要の変化に迅速に対応できる状態ではないだろう。インドの都市交通量の多さも問題ではある。酸素に限らず、その他の医療物資に関してもこの問題は再び現れると思うので、この問題には早急な解決が必要。
▽今週のマーケットについて
◎米国経済は確かな回復軌道に
米国経済:ISM製造業景況指数
このところの米国経済指標をみると、おおむね堅調なデータが出ている。経済がうまく循環し始めている状況にあることをうかがわせる。製造業では、昨年末のロックダウンにも足を引っ張られずに、好調を維持していたが、IHSマークイット社が公表した米国の製造業PMI速報値(4月)は60.6と、同統計が始まった2007年5月以来で最高水準を付けるなど、順調に推移している。3月にバイデン民主党政権が超大型の追加経済対策を取りまとめたことで、景況感も後押しされ、景気回復に一段と弾みがついている可能性がある。サービス業も回復途上にあり、製造業・サービス業合わせた全体の活動を示す総合指数では、4月速報値は62.2と3月の59.7から大きく上昇した。これは、同統計が開始された2009年以降で最高の水準である。
ワクチン接種が進み、企業も個人も活動制限措置が緩和されたことから、小売り売上高データが示す通り販売は好調である。これが企業活動の伸びに拍車が掛けている。製造業の受注は記録的なペースで拡大している。一方で、昨年来、コロナ禍でサプライチェーンに問題をきたした傷あとは生産面に残っており、受注残が約7年ぶりの高水準となっているところに、需要刺激により、追加需要が発生している状況である。需要に見合うように、供給の改善が追いついていくかは不透明である。旺盛な需要に対応しようとしているが、原材料の不足やロジスティクスの問題が、製造業の一部ですでに表面化していることだろう。原材料の供給状況の悪化は、特に資材コストの見通しに対する懸念である。また、配送コストの上昇も懸念される。実際に、総合PMIの販売価格指数は過去最高水準となっており、製造業もサービス業者も、コスト上昇分の価格転嫁に動いている可能性を示唆している。
住宅需要は、金利の上昇もあって、昨年末にいったん落ち着いたが、3月は追加経済対策による景況感の改善にも後押しされて急回復し、再度増加に転じている。3月の新規住宅建設は2006年以来の高水準である。
今年に入り、1月2月と物価上昇への懸念から、米ドル長期金利に上昇圧力がかかった。金融当局者が3年程度先までの政策金利のゼロ金利維持に繰り返し言及し、一旦は沈静化したが、マクロ環境からは、金利上昇を引き起こしかねない状況は続いていると、引き続き筆者は考えている。
◎欧州経済も底入れへ
ユーロ圏経済: 購買担当者景気指数(PMI)
欧州経済は、新型コロナウイルスの変異種流行により、3度目のロックダウン措置が広範に実施されるなどしたことから、サービス業を中心に立ち直りつつあった景況感が腰折れするような動きがみられた。一方で、製造業では特に中国経済の拡大による需要回復に支えられて、ドイツを中心とする工業国の景況感は、じりじりと回復し、ロックダウン実施下でも堅調に推移してきた。
そしてここへきて、ユーロ圏でも、総合購買担当者景気指数PMI(4月速報値)が53.7と、事前予想に反して3月の53.2から上昇するなど、景気回復の足取りが定まってきている。ワクチン接種の普及に弾みが付けば、景況感の改善ペースにも加速感が出る可能性があり、欧州経済の立ち上がりにも注意を払っておくべきだろう。
◎株式相場の展望
3月は、米国バイデン政権が巨額の追加経済対策を取りまとめたことで、景況感は大きく改善した。2021年に入り景気回復への期待に支えられ、断続的に高値を更新してきた米国株式相場だったが、3月までは、やや、もたついた印象さえあった。しかし、回復期待を確かなものにする財政政策に加え、インフラ投資計画も前に進めたことで、力を得た感はある。加えてミクロ要因でも、第1四半期の企業決算が良好であることも、相場にとっては支援材料である。企業業績についていえば、昨年第4四半期の決算が良好だったことから、反動減となるとの予想もでていたが、杞憂に終わる可能性もあろう。ただ、景気回復期待は継続しそうだが、昨年のテクノロジー銘柄が主導するような力強い相場ではなく、バリュー株やシクリカル銘柄への物色という流れも一巡した部分があり、今後一段と力強い相場と言えるかとなると、やや気がかりな部分を筆者は感じている。
◎米国債券相場は引き続き要注意
債券相場では、4月に入って金利の上昇には歯止めがかかった。景気の回復局面では、一定程度の物価の上昇は当然であり、騒ぎ立てるものではなく、一過性のものかどうかを見極める必要があるという至極まっとうな金融当局者の指摘に、市場が冷静に聞く耳を取り戻したという結果である。米FRBは、短期金利をゼロ金利で据え置くことは明確にコミットしているし、欧州中央銀行(ECB)も4月22日の理事会で、大規模な量的緩和の維持を決定し、ラガルド総裁はパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の段階的な縮小について「時期尚早」との見解を示して、金利上昇見込みの参加者の鼻をへし折った。
4月27~28日には米FRBが公開市場委員会(FOMC)を開催する。FOMC後の記者会見でパウエルFRB議長がどのような見解を示すかは要注意である。良好な経済指標の発表が相次ぐ中、パウエル議長の発言は、米国債利回りの動きに影響を与えるカギとなる。
ただ、金利上昇を巡るこの悶着は終わっているどころか、これから長く続くことになるだろう。経済指標を見ても、前述の通り、米国では旺盛な需要が、物価上昇の引き金となる可能性は十分にあると考えるべきである。
また、これも従来からの指摘通りだが、米国財務省は毎月大量の米国債入札を繰り返し実施しており、債券相場の需給は要注意すべきである。金利上昇要因は根強いということである。
◎為替相場では主要通貨の優劣は見えにくい
外国為替市場では、景気の回復が確認されるとその通貨が買われるということが日々繰り返されており、これといったトレンドは明確ではない。主要通貨間では、当面、ボックス圏での取引が続くと考えておくべきだろう。中期的には、金利が先に上昇傾向を強めるであろう米ドルの上昇を想定しておくことに変わりはない。
ドル円も、既に今年の予想レンジの上限111円(4月)から下限103円(1月)を両方付けてしまったが、このレンジを逸脱して取引されるような事態は、想定していない。
新興国は、新型コロナウイルスの感染状況により長期間苦しむと予想し、主要先進国との格差がより拡大するとの見方から、新興国通貨については弱気の見方をしてきたが、国ごとの爬行性のほうが大きくなりそうである。したがって、比較的、感染状況の軽度な東南アジア通貨などは、選好される可能性があることに注意しておきたい。インドもそうだが、トルコや南アフリカは、通貨価値の回復には時間がかかるだろう。
◎暗号通貨
暗号通貨は、バイデン大統領がキャピタルゲイン増税を計画していると伝わったことで、急落し、ビットコイン(BTC)は、3月以来の5万ドル割れとなった。ただ、不透明な状況が続く中、取引参加者は増加すると考えられ、中期トレンドは上昇とみるべきだろう。ただ、相変わらず、ボラティリティが大きすぎるため、一度に相場に乗っかることは避けたい。また、主要な暗号通貨は良いが、あまり特殊な暗号通貨には手を出さないという鉄則は守っていただきたい。
◎原油相場
世界経済の回復というシナリオは、ある程度織り込んで価格上昇してきており、60ドルを大きく上回るような価格上昇を期待するには、まだ無理があると筆者はみている。
新型コロナウイルスに関して、欧米でワクチンの接種が進み、需要増加が期待できる明るい兆しが見られることも確かである、一方で、インドなどの新興国の厳しい感染状況を見れば明らかなように、楽観できる状況とは言えない。産油国の減産協調体制も、サウジとロシアの握りが頼みで、不透明感は漂う。
近い将来のインフレの火種から価格下落も見込みにくいため、引き続き60ドル前後のレンジ相場だろう。
◎金相場
米国経済指標が米国経済の回復ぶりを示し、世界経済の回復期待が高まると、米国債利回りが上昇する。そうなると金利の付かない金への投資意欲は、残念ながら減退する。ただ、世界の不透明感の中、一定の需要に支えられることは疑いなく、また、将来のインフレヘッジという期待もいずれ出てくるであろうから、金も1オンス=1700ドル台前半なら買い支えられるのではないか。
◎ギリシャ格上げは欧州の火種となるか?
大手格付け会社S&Pが4月23日、ギリシャの格付けを1段階引き上げて「BB」とすると発表した。背景は、欧州復興基金による支援がギリシャの財政状況を改善させるという楽観論である。ギリシャは、欧州連合が昨年合意した欧州復興基金から194億ユーロもの補助金と127億ユーロの融資を受ける予定で、総支援額はギリシャの国内総生産(GDP)の約16%に相当する巨額なものである。S&Pは、この復興基金支援により、ギリシャ政府の構造改革と財政再建が加速し、政府債務が縮小するという流れが確固たるものになるとしているが、それほど甘くいくものだろうか筆者は疑問である。加えて、資金を拠出する側の一部EU参加国にとっては繰り返しギリシャ支援に付き合わされてきた記憶が付きまとう。この問題ではため息しか出ないどころか、我慢ならないと考えるのも理解できるほどである。復興基金の支援を受けて、上手くいかなかったときのことも考えておいた方が良いのではないか。
同じく、欧州復興基金の恩恵を受けるイタリアも、ドラギ前ECB総裁が首相に就いたものの、国内は相変わらず、ぎくしゃくしている。イタリアは個人投資家に対象を絞った国債を発行するなどイタリア債のリスクプレミアム解消に躍起だが、肝心の構造改革と財政再建は進展がみられるかどうか不透明である。ECBのドラキュラと言われたドラギ首相の手腕には期待したいが、それを発揮できるかどうか?
なお、欧州中央銀行(ECB)の6月の会合では債券購入策を巡って理事の間で難しい議論になるとも予想されており、欧州債券市場も一波乱ある可能性が漂う。
◎中国金融市場は引き続き試練か。
2020年、世界経済がコロナ禍に苦しむ中、それをうまく切り抜けプラス成長を維持した中国経済は、世界の金融市場の回復とともに、株高と人民元高に沸いた。しかし、2021年に入って、米ドル金利の上昇による為替相場でのドル高・人民元安と、中国当局の資産バブルを警戒するリスク抑制のための金融引き締めが、中国株と中国国債、人民元の上昇トレンドを抑える格好となった。
中国株式市場の指標の一つである、CSI300指数は2月前半には13年ぶりの高値5807を付けたが、3月4月は高値からは下落し、終値ベースで5000割れが続いた。人民元は2月に一時対ドルで6.4元まで迫るなど買い進まれたが、3月は約1年ぶりの振れ幅で下落し、対ドルでの年初来上昇分を打ち消した。中国国債も、3月には米国債の調整に引っ張られて、価格は下落し、外国人投資家の保有高は3月に約2年ぶりの減少に転じた。
ただ、中期的に見れば、中国当局の資産バブル警戒姿勢は不変であり、今回の対応はアドバルーン的なもので、本格的に金融引き締めや財政支出圧縮に動くものではないと考えている。市場に流入する投機マネーのレバレッジ解消への取り組みは、中国政府の長年の課題であり、そのことのみをもって、中国金融市場が本質的に変調すると判断するのは早計だろう。むしろ、中国経済が、国内消費をけん引役として自律的に回復し、加えて世界経済の需要回復の恩恵を受けるようであれば、上昇トレンドが終了したとみるには無理がある。
短期的にはボラティリティはある程度高いまま推移するだろうが、中国には成長余地の大きい銘柄はまだまだ多く、バリュエーションも米国株ほど高いわけではない。
米国債利回りの上昇や、米中関係の緊張が高まるなどの要因は警戒すべきだろうが、低調な域内需要にあえいでいたユーロ圏経済が中国からの需要で、相当に下支えされてきていることを考慮すれば、極端に弱気に傾く必要もないだろう。
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今週の経済指標
5月3日(月)
ドイツ: 小売売上高(3月)
香港: 域内総生産(第1四半期)
米国: ISM製造業景気指数(4月)
5月4日(火)
中国: 財新マークイット製造業PMI(4月)
英国: CIPS製造業PMI(4月)
米国: 耐久財受注(3月)
5月5日(水)
ユーロ圏: 非製造業PMI(4月)
ドイツ: 非製造業PMI(4月)
米国: ADP雇用指数(4月)、ISM非製造業景気指数(4月)
5月6日(木)
ユーロ圏: 小売売上高(3月)
ドイツ: 製造業受注(3月)
英国: CIPS非製造業PMI、BOE政策委員会
米国: 失業保険関連統計(前週分)
日本: 日銀政策決定会合要旨
5月7日(金)
中国: 貿易収支(4月)、財新マークイットサービス業PMI(4月)
ドイツ: 鉱工業生産(4月)
米国: 雇用統計(4月)、卸売在庫(4月)
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